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病める時も健やかなる時もプロは逃げない

今日、Startup Weekend Tokyo Fintech API (*1)に参加した。
Startup Weekendは週末の54時間を使って起業プロセスを経験するスタートアップ・カルチャーのコミュニティ・イベントである。
参加者はチームを組んで54時間の間に顧客課題を探し出し検証実行してくる。それを起業家を中心とした審査員が審査する。今回のStartup WeekendはFintech にテーマが限定されており、会計や金融の課題を技術で解決するスタートアップがテーマだ。

最終のチーム・ピッチのフェーズでの、ある審査員のプロとアマの違いについてのコメントが面白かった。その方は、トレーディングのプロフェショナルとしての経験がある。彼が見る、プロのトレーダーとアマチュアのトレーダーの違いとは何か。

「プロフェショナルとアマチュアの最大の違い。それは、トレードがうまくいかなかったときに顕著に出る。プロは、うまくいかなかったときにも、その失敗を客観的に見て、自分が感情的に見たくない情報も受け取って、それを評価して、振り返ることができる。アマは、うまくいったときにはSNSで発信したりするが、うまくいかなかったときには黙ってしまい、自分の感情的に見たくない情報を見ることがない。自分の都合の良い情報だけを見てしまう。客観的な失敗分析ができない。」

なるほど。

プロのトレーダーとはいえ、個々のトレードにおいては、損を出してしまうこともある。100%勝てるわけではない。だが損を出した時にそこから目をそむけては、学びの機会を失ってしまう。

トレードがうまくいってプラスの結果が出た時に喜ぶのは、誰でもできる。それは、人間の感情そのものだ。承認されたくて、自慢したくて、それを喧伝する行動をとりたくなる。
一方で、うまくいかなかったとき、悪い結果が出たときにそれを受け止めるというのは、感情のしくみからすると、とてもむずかしい。過去の自分の選択が誤っていたことを、認めなくてはならない。

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人生で一回きりの「お遊び」として株を買いました、という人ならば、売買で損を出しても、儲けても、結果を振り返らなくてよいだろう。あくまで、その人にとってのトレードとは、人生におけるたった1つの点である。

しかし売買を続けるならば、行動結果は点にとどまらず、点と点を繋いだ線になっていく。損得はトレードを繰り返した結果の蓄積として、継続的に評価すべきものとなる。
通算の損益を改善するには、地味なようだが、個々の失敗を正視し、振り返り、学習を次の行動に反映させる。この繰り返ししかない。だが、その重要性は頭で分かっているけれども、なかなか実行はできない。
これは、トレードに限らず、うれしい結果 vs つらい結果がどちらも出てくるものを何か続けるならば、だいたい当てはまるのではないか。

気持ちが邪魔をして、失敗を認めることができないのは、人の性である。これには、人間の思考の仕組みに、ダニエル・カーネマンが唱える「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」と2種類あることが関係している。 (*2)

システム1は、悪いものを目にしたら、すぐにそれから逃避し、生存することを優先する即断即決の思考だ。対して、システム2は経験と学びを消化して行う熟慮の思考だ。
トレードをするたびに、良い結果をただ喜び、悪い結果のときに目をつぶってしまうのは、まさにシステム1のみを使い続け、学びを得られていない。これでは、何度も同じ失敗を繰り返し続けることになる。だが、もし良い結果も悪い結果も、システム1の「感情の自動運転」に引きずられず、トレードの勝因または敗因を分析して、適切な学びを得ることができれば、次に行うトレードの結果が良い方向に進む確率が上がるはずだ。そのわずかな確率の差の積み重ねが作れるかどうか。ここが、プロとアマを分ける要因なのだろう。

失敗を正視して、感情の直感的反応をコントロールしながら得る学び。これを心に刻みつけて次以降のアクションを修正することで、だんだんとシステム1の自動運転の質を高めていく方策を私たちは持っている(システム1を排除することはできない)。

私自身は最近ほとんど投資をしなくなってしまったのだが、もし再開するときには、システム2を強く意識して、悪い結果が出ても逃げないで学ぶことを忘れずにいたい。 そしてこれは、トレードに限ることでなく、人との付き合い方にも当てはまる気がしている。

 

(*1) swtokyo.doorkeeper.jp

(*2) funiyanma.hatenablog.com