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ピボットよさらば

前回ピボットは選ぶのは心理的に楽だが、実際道のりは厳しいのではないかと書いた。それはなぜかということを書きたい。

起業家が課題解決を志すとき、そこには並々ならぬ強い情熱があることが多い。しかしそれではビジネスにならなそうだと気づいてしまったときに、諦めることは逆に難しいものだ。自分は金のためではなく、志のために事業を始めるのだ、と思うのであれば、尚の事、心理的な矛盾に戦わなくてはいけない。ただでさえ事業の未来が閉じようとする中、それは大変辛いことである。

そこで、選択肢に、撤収でもなく仕切り直しでもなく、ピボットというものがあると知ったらどうだろうか。最初の志を残したまま、課題と顧客に対するアプローチを変えればよいのだ、と思うことが出来れば、つらい状況から避難することができる。いわば、挫折寸前の起業家に対するシェルターのような立ち位置に見えるのだ。

だが、このようなピボットは大抵の場合は、選んでからの苦労が尋常ではないように思える。なぜかというと、ピボットをするときの「残す足」に大きな問題があるからだ。

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前回貼ったコービー・ブライアントのバスケ動画を思い出していただきたい。コービーがなぜ軸足を残し、片足しか自由に動かせないピボットという状況で、何歩でも歩いてよい有利なディフェンダーを振り切ってシュートを打つことができるのか?
鶏と卵のような答えになってしまうが、「シュートを打って得点するという目的地を明確に描いているから」だと私は考えている。 これが、不安に満ちて相手のディフェンダーへの恐れがあれば、軸足を残して制約された動きの中では手も足も出ないように封じ込められてしまってもおかしくはない。しかし、必ず最後自分で得点してチームを引っ張るのだという強い思いと自信があるから、相手はつい気圧されてシュートを打つ隙を作ってしまう。

これはスタートアップのフェーズにも通じる教訓だ。
「課題がズレているのに、肝心の課題に手をつけずに、いじりやすく見えてしまう箇所に手を入れてしまう」または「課題のズレを直そうにも、0から作るよりも変更のほうが楽だと思う」結果、本質的な敗因分析をすっ飛ばして行動に移ってしまい、適切な変化の幅を稼ぐことができていないのではないか。

撤収と仕切り直しは、今のプロダクトを諦めることができれば、そこまで辛くはない。最初の何十時間かだけの明白な損失が出れば、そこさえ頭をスッキリさせれば良い。しかしこれがイケてないピボットになってしまうと、志が残っているように見える結果、半端なマーケット・プロダクトのフィットに奔走してしまい、よりいっそう時間がかかり、チームメンバーのモチベーションも落ちてくる。それまでに投入した時間、エネルギー、費用そして自分の情熱に引き摺られてしまうこと。これは、駄目なピボットに至りそうなケースだ。

一方で上手くいきそうなピボットというのは、なぜそれを行うことで自分たちが最重要と考える指標の伸びが起こると考えられるかを事前にある程度筋道立てて説明できそうな場合ではないだろうか。
そのようなピボットのシナリオを描くうえで参考になるのがピボットピラミッドの考え方だ。 (*1)

私もさっき検索して見つけて読んで納得したばかりなのだが(笑)平たくいうと、顧客→課題→ソリューション→テクノロジー→グロースの順に下から積み上がる構成であり、この順番は動かせないということだ。すなわち顧客をピボットしてしまうことは残りすべてをガラガラと崩して作り変えることを意味している。
この考え方を使えば、適切なピボットを行うための思考整理に役立つだろう。

バスケットボールのピボットは、熟練したプレイヤーが「ゴールへのプロセス」の中で無意識で選択するプレイである。
だが事業におけるピボットは、なぜピボットを選ぶべきかを筋道立てて説明することが必要になってくる。
言葉に引っ張られず、感情に引っ張られず、あくまでフラットな選択肢の1つとしてピボットを扱うことが大事に思う。

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最後に、突然だが、とても大事なはなし。

実は、恋愛にも、このピボット理論が見事に当てはまる。

私はこの定理について真に驚くべき証明を発見したが、ここに記すには余白が狭すぎる。 (*2)


(*1) 500startups.jp

(*2) izquotes.com

フェルマーの余白芸に引っ掛けたジョークである。