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1ヶ月毎日ブログ書く企画ではじめたブログです。

婚活パーティの衝撃【後編: 比翼連理なる矛盾の発見】

前回の記事 「婚活パーティの衝撃【前編: 部屋の構造的な意味で】」の続き。

婚活パーティに行ってみたら、そこが2ラウンドかけて参加した異性全員と話せるしくみで運営されていた。ぼくは1ラウンド目終わって7人中2人と「双方興味あり」のような状態になったところまで、前回に書いた。

2人の女性のプロフィールを簡単に書いておく。
Aさん、32歳。仕事は会社員。
Bさん、30歳。仕事は医療系国家資格。

2ラウンド目は、この2人とどう話そうかな〜、というのがメインな心理になることに気づいた。

逆に、ほかに最初の5分で興味を持ってもらえなかった人に、自分に関心を持ってもらおうというのは、結構難しい。
特に、1ラウンド目でまったく話の弾まなかった人(Gさん、28歳、会社員)との2ラウンド目などは、完全に罰ゲームといえよう。
という不毛さを、再度同席した瞬間、ぼくだけでなくGさんも、はっきりと感じていたような気がする。

「一応話します?」
「…あっ、はい」
「中野住まいなんでしたっけ?」
「…そう書いてますしね」
「そうですよね。…中野ってどんな感じですか?」
「街ですね、ふつうの」
「…そうですよね」

みたいな。
だが、不毛とはいえ、2ラウンドめの1回ごとのセッションは1ラウンド目より短いこともあり、実質3-4分だけ。なんともいえない居心地の悪さ、これはこれで面白い経験だとも思う。

お互いに興味ありだったAさんとの会話の2ラウンド目を思い出そうしているのだが、会話の中身が思い出せない。
好きな旅行先の話をしたような気もするのだが。びっくりするほどよく覚えていない。

そのあとのBさんとの会話についても、そんな感じ。
1ラウンド目で、仕事の話や趣味の話もある程度は触れた上で、「消去法の◯つけ」プロセスをしたことが、間違いなかったよね、という確認の感覚を抱いた。

この2ラウンド目で働く力学は「確認」と「選択」なのだと思われる。
ぼくの場合は、もう2ラウンド目始まった時点で、この日、この後カップリングが成立するならAさんかBさんかしか、ほぼありえないので、「どっちにしようかな」を決めることが必要になる。
文章で読むとイヤな感じかもしれないが(笑)男女ともに参加者全員がそうするわけであり、それが求められている場なので、当事者たちにとってはごく自然にできることだったりする。
いわば、環境とルールのパワーなのである。

これが、合コンみたいに、目的設定がブレやすく、ちょっとした行動のゆらぎで関係性自体がすぐ放散してしまうイベントでは、これは成り立たないと思った。
成し遂げたい目的があるならば、自分の意志やガッツに頼るよりも、環境とルールを味方につけたほうが、理にかなっていることも多い気がする。これは婚活にかぎらず。

環境やルールに頼らない!己のチカラで解決する!
という人は、素敵な異性を見つけて、熱心なアプローチをして、ゲットすべきだ。
皮肉でもなんでもなく、それができたら、どれだけいいだろうか。
ぼくには、今回みたいな方がしっくり来る。というか、できぬものは、できぬのです。

話がそれた。そんなこんなで2ラウンド目は流れるように終わった。

この段階で、男性の半数と女性の半数が席を立って移動して、同性どうしが隣になるように席を組み替えるプロセスが入る。
要するに、ピンク色のリクエストカードを書くときなので、それを異性に見られないようにする手順だ。いや、このあたりも、巧みなオペレーションに落とし込まれているなと、感心した。

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(これがリクエストカード)

ぼくは第1希望に、Bさんの番号を書き、第2希望にAさんの番号を書いた。
Bさんを第1希望に選んだ理由?
その場の直感。
なんとなく、Bさんのほうが無理なく話が続けられそうな気がした。けど、これは後付の理由づくりかもしれないので、やっぱり直感でしかないと思う。
相手の年齢は考えなかったかって? 考えないといったら、嘘になるかもしれない。

カードを司会が回収し、裏で集計する。その時間つぶしと、アップセル狙いで、「ライトな結婚相談所チックなサービス」の利用に興味あるかを尋ねるアンケートが配られた。
このサービスは登録料30,000円、月額10,000円程度から、幅広くリコメンデーションやマッチングを行ってくれるものだった。
ビジネスとしてはアリなのだと思うけれど、このタイミングというのはどうなのかなと思った。だって、今回収されたリクエストカードのマッチングが分かる前のドキドキしている段階で、次のことを考えるって、人間けっこう難しくない?(笑)

いよいよ最後にマッチングの発表。
司会のキマっている女性が、ここぞとばかりに、声を張り上げる。

「おめでとうございます!
 本日、2組のカップルが誕生いたしました!
 1組目は、男性●番、女性▲番。2組目は、男性■番、女性▼番です!
 皆様、盛大な拍手をお願い致します!」

何がおめでたいのか良く分からないし。コレ拍手したい人っているのかな。

あれ。
2組目ってぼくの番号じゃないすっか。で、相手の女性は、第1希望で選んだBさん。

うわあ。
いざそうなると、困る。
テンプレートどおりの司会の言葉になんの共感も湧いてこない一方、これ選ばれるとどうしたらいいんだろうか、という焦りが湧いた。

で、思わず立ち上がってしまった。

「まだ、立たないでください!お座りください」

即座に司会に怒られた。座った。

その後、カップルになれなかった男性たち、女性たちはそれぞれ性別ごとでまとめてタイミングを分けて、退出させられた。
タイミングを分けるのは、その後でありえる「男性が女性を追いかけて声をかける」ことの防止であろう。確かに、それをされてしまうと、女性の不快度が上がり、クレームの元になり、次に来なくなってしまう。

とにかく徹底的に女性のリピーターを大事にするのが、婚活パーティ・ビジネスの要諦なのだ。女性さえ確保できれば、単価の高い客である、男性を引き込めるのだから。

そして会場には、司会女性と、男女2人ずつだけが残された。
ようやく席を立つことを許され、ぼくはBさんの隣に座った。

Bさんと、会話する。といっても
「あ、どうもありがとうございます」
「こちらこそ」
くらいの朴訥たるものでしかない。

だって、そこで
「選んでくれてありがとうございます!」
「私もとっても嬉しいです!」
なんてテンションも出ないし。実質会話時間、まだ10分以下なので。

司会から、ここでようやく連絡先の交換を許された。
これもまた、婚活パーティ・ビジネスの要なんだと気づく。
容易に連絡先を交換させると、「ストーカー的な男」によって、女性参加者の満足度が低下するリスクがある。
双方選びあうプロセスを経て初めて、連絡先が交換できるのだ。
最初からメッセージ送信によって関係構築を図ろうとするネット出会いサービスとは全く対照的な順番になる。考えてみると面白い。

しかし、思う。

「リピーターが多い」のは安定するビジネスの肝だと思うけど。
婚活というテーマにおいて、リピーター率が高いという状況は、顧客の目的に合致しているのだろうか?
むしろ、リピート率を低く、目的達成できるのが最大の顧客満足ではないのだろうか?

だがそれを責めることもできまい。企業の力学とは、自然には、現状の延長線上に進むもの。
かくして、リピート率の高い、よくできた婚活がぼくたちの身の回りを埋めていく。

矛盾。

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さてぼくとBさんは会場を出て、下りのエスカレーターで話をしていた。

「あの、すいません、Bさん、ぼくは今日チャリで来ちゃったんですけど。」
「えっ。そうなんですか。」
「遅れそうだったんで…。ところで、この後ってお時間あります?」
「ありますよ」
「じゃあ軽く食事でもしましょうか」
「そうですね、私、いいお店知ってますよ」
「あ、じゃあぜひ…お願いします。」
という感じで、Bさんにお店を教えてもらうという、見事にイベント・アフターの準備不足ぶりを露呈したのだった。

かといって、会場近くのいいお店をカンペキに押さえておいてから婚活パーティに望んでも、カップリングされない可能性のほうが高いわけで、これもなんか不毛だなーって思ってしまう。
だって今回でいうと、男性8人(女性より多く、余っていた)のうちカップリングされたのって2人で、成立わずか25%だ…。
ぼくが今回カップリングされたのも、基本的にはただの偶然。

Bさんに連れられて入ったのは明るい雰囲気のカフェ/レストランだった。土日だが夕方ということもあり、そんなに混んでいなくてすぐに座れた。
ぼくは聞いてみた。

「何飲みますか?お酒って結構好きですか?」
「好きですよ」
「あ、頼んでください!ぼくは自転車なんで、ソフトドリンクでいいです」
「あ、じゃあ私も別にいらないです」
「すいません…」

という配慮不足の上塗りがあったことを、ここに告白する。
とりあえず婚活パーティに自転車で来るのはやめたほうがいいと思った。

とはいえその後は、普通に仕事の話や、家族の話などをしつつ、互いの価値観を見るような質問も入れつつ、お互いに「ありかもな」という感覚を深めたような気がする。
が、錯覚かもしれない。

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ふと感じる。

婚活パーティでカップリングできたとしても、そこがようやくスタート地点であって、そこから先に続くかどうかは分からない。というよりも、ほとんどがどこかで終わっていくのだろう。
お互いが自分の中に、相手と連絡し続け、会い続ける「とくべつな理由」を作ることができなければ。
何かの弾みか、面倒くさいかで、ひとつでもプロセスが停滞すると、基本的にはオシマイ。

想像してしまうと虚しい。
だがそれも自分が当事者としてやってしまっているのだと分かっていることが、虚しさをいっそう、複雑なものにする。

虚しさついでに、費用を計算してみよう。

トータル10人とカップリングできれば、将来そのうち1人と結婚できる「かもしれない」と仮定しよう。
婚活パーティに1回参加すると、今回同様に、確率25%でカップリングになれるとする。
10人とカップリングできるためには、少なくとも40回はコレに参加しないといけない。
週に1回参加するとして、およそ10ヶ月かけて、1人見つかる「かも」。
費用は約5,000円*40 = 約20万円。
結婚相談所が入会金10万円程度、月会費1万円程度だとすると、10ヶ月かかると同程度か。
成婚料というものが、結婚相談所にはあるけども(相場は約10万円)。

そして計算してみて感じるんだが、20万円かかることより、この手順を40回繰り返すことのほうがはるかに辛く思えてきた。探して、申し込んで、参加して、リクエストカードを出して、etc。

やっぱり本気で結婚したいならば、結婚相談所で、プロにリコメンデーションをまかせて、選り好みせずに向き合うというのは精神労力削減の意味でも良いのかもしれないと思った。
前々回書いたとおり、収入と定職の観点で、ぼくには結婚相談所を使う資格がないのですが。
使える状況にある方は、古いとか恋愛結婚がいいとか、食わず嫌いをせずに使ってもいいのかも。

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あれから2週間経ち、Bさんとは、いまも連絡は続いている。

だけど、「ただの良いお友達でした」で繋がりを自然消滅させるほうがラクな力学が、この世界を支配している。
相手もまた、次なにかの婚活の行動を取り続けているだろうし、ぼくもまた何かをするだろう。
するとそこにカネと労力とがかかり、比較検討プロセスが入り込み、集中と選択と決断を先送りにさせていく。
だが選択と決断のカギは自分の側にあるのではない。いつだってそれは相手の側にある。

可能性を広げる行動を取り続けなくてはいけない&それができることが、今あしもとにある可能性を狭めるという矛盾を引き起こす。

これが、矛盾その2。

分かっていても、矛盾を解消する方法はない。かくして、葛藤は続く。

閉塞感を抜け出したくて、また新たな婚活サービスを探し、それにお金と時間をつぎ込んでも。
事業構造の矛盾(リピート率の向上)と個人内面の矛盾(継続と選択と不一致)の比翼連理な強固な構造の中にいる限り、行き着く先は同じことだ。


この感覚と状況、婚活に苦しむ人達のある程度共通するものではないだろうか?

というのが、自分が今回参加してみて初めて、等身大に分かったことだった。
この衝撃は重く、まともに味わうと、立つ元気も出ない。

この手詰まりと閉塞を、どうやって克服すべきなのだろうか。
袋小路の脱出の成功例を知っている/自分は成功した、という人の話を聞いてみたい。

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