ギブギブン

1ヶ月毎日ブログ書く企画ではじめたブログです。

神が賽振る世を進む、起業家たちの手に地図を

2008年。いまから9年前のこと。大学4年生のぼくは友人3人とヨーロッパに、卒業旅行に出かけた。
旅の目的は、ドイツからフランスまでを、途中いくつかの国を通りながら、自転車で旅することだった。

誰一人ヨーロッパに行ったこともないメンバーだったが、一見するとその無茶な計画がなぜ、成り立ったのか?
答えは、地図の存在だ。

まだいまほどGoogle Mapsは万能ではなかったものの、ぼくらが通りたい国をつなぐ主要道路と、都市の存在を、日本にいながらにして、十分な実感がもてる情報として教えてくれた。
そしてまた当時スマートフォンはなかったので、ドイツについた僕らは、書店で道路地図の本を購入した。ドイツ、フランス、ベルギー、オランダといった西ヨーロッパ諸国が収録されたもの。
その本が、唯一のガイドだった。

地図の力がぼくらの旅行のはじまりと道中を常に支えていた。
現実にたどるべき道を予め旅人の頭に教えてくれる。だからこそ、リスクが低減し、自分たちの生命を危険にさらすことを抑えることができる。
数千年をかけて人類が蓄積してきた知見とデータの恩恵をひしと感じる。

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さて、この「地図の重要性」。じつは会社経営もまったく同じことなのではないかと痛感したのが、本書「0 to 100 会社を育てる戦略地図」 を読んでの一番の感想である。

とりわけ不確実性のリスクを取るのが前提となるスタートアップにおいては、著者のいう「ゼロマエ」から「100」に至るまでのあいだに、手を替え品を替え、様々なトラブルや困り事を、マーケットで神はサイコロを振って、繰り出し続ける。
その困難に対して、予期して対策を持つための地図があるかないかによって、スタートアップの生存率、成功率がどれほど変わってくるか。
それは、本書を一読することで、学習能力の高い、危機に気付ける起業家であれば、即座に感じ取ることと思う。
本書それ自体が文字通り、地図なのだ、と。

あなたがもし起業家、または起業を志す者であるならば、本書を一回読むだけで、これからの旅に起こる危機を知ることができる。起こり得ることのなかで、対策不能な不確実性と、予見可能な不確実性を切り分けて、対応にかけるコストとリソースを節約し、「致命傷をくらって退場する確率」を下げることにも繋がるかもしれない。

これはぼくだけの感想ではなく、本書に目を通した何人かの間で上がってきた感想でもある。

あなたがもし起業家ではなく、スタートアップへの転職や就職を試みる、あるいはすでにその中で働くひとであったとしても、別の角度で非常に有意義だ。というのは、あなたの勤める会社の社長が、リスクを正しく認識して成功確率を上げるために行動を変更できる人かどうかが、0から100のフェーズの全体感を通してチェックすることができるのだから。

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仮に、地図の用意や事前調査なしに、ヨーロッパ横断の自転車旅行に私が出たいと言ったなら、それは止められるべきだろう。また、だれにも止められずに事故を起こして負傷して旅を途中で終えたなら「なぜそんな準備不足で無茶な旅に出たのか」と厳しく指摘されても文句はいえないだろう。

しかし、スタートアップを起業家が始める時に、なんとなく始めて、続けることがあり、結果的にそれが全体のフェーズ感を理解した打ち手を欠くことで、致命的に痛手を受けて退場することになったとして、「なぜそんな準備不足で起業したのか?」と責められることはあるだろうか?
おそらく、その確率は自転車旅のケースよりずっと低いだろう。なぜなら、自転車とちがってそこに地図があるとは思われていないから。

でも、その認識を改める良い機会ができた。起業家には、戦略のための地図があるのだ。たった2,000円足らずで買える地図が。
これから起業家が、地図を持ち、旅に出て、必要に応じて道を修正していくことが当然の世界になってくれたらと思う。
それは、起業の成功率を高め、ひいてはそこに関わるひとの生き方を支えることに繋がるはずだ。

最後、一応書いておくと。本書の著者、山口豪志氏は私の知人ではあるけれど、本書を評価する上で、知人だからといって持ち上げたつもりは毛頭ない。
ただし著者の行動の裏側にある情熱や、それを選び取る基準については少しだけ知っている身ではある。ので、本書を読み、その理念と志が、ユニークな書籍としての結実したことを率直に祝いたいと思っていることを添えておきたい。 (*1)
(注: 献本を受けたわけではなくちゃんと自費で買ってます・笑)

0 to 100 会社を育てる戦略地図 (Amazon)


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昆虫博士になるやつを応援するのが僕の夢。虫採り少年と、父の死と、ベンチャーと。