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1ヶ月毎日ブログ書く企画ではじめたブログです。

M1 MacBook Airと私

ガジェット好きの皆さんはよく知っての通り、AppleがM1という自社で設計したシステムオンチップを搭載したMacを発売したのは、今を去ること1年前の2020年11月である。

www.apple.com

ついにIntelのCPUから決別して、自社開発のチップに乗り換えるということが発表されたのはその5ヶ月前、2020年6月のWWDCAppleの開発者向けイベント)であった。そのときには、2年をかけて、完全にIntelチップから自社チップに移行すると発表された。私含めて、多くの人がその発表を聞いて「いや本当にそんなことできるの?」と思ったのではないだろうか。たしかにIntel Coreシリーズのチップ搭載のMacは性能的にもWindows機に対して明らかに見劣りするようにはなっていたが、そうはいってもコンピュータの根幹であるチップをそんなまるごと変えるというのはそうそう簡単なことには思えなかった(いやたしかにかつてApplePower PCからIntelに乗り換えた歴史はあるんだが)。

だが、2020年11月に発表されたM1チップと、それが搭載されたMacBook AirMacBook ProMac miniの三機種は、その不安をいとも鮮やかに消し去った。驚くほど高い性能を発揮したから。

と、私はさも自分が体験したかのように書いているのだか、実は2020年には私はM1チップ搭載のコンピュータは買っていないのですべて他人から聞いた話である。というのも、その年の6月にIntelチップのMacBook Pro 16インチモデルを購入してしまい、実務的にそれで困っていなかったためである。なので、「M1はすごい」という話は聞くものの、ほとんど体験することなく時を過ごしていた。

そして、次に私が入手することにしたパソコンは、もうMacですらなかった。Windowsデスクトップである。結局のところ、コストパフォーマンスでいえば、Windowsデスクトップを買うのが一番いいんじゃないかという結論にいたり、今年2月に購入した。ちなみにCPUは興味を持っていたRyzenシリーズの、Ryzen 5 5600Xにした。GPUNVIDIA RTX 3060という構成だ。そこまで金額をかけるわけではなく、さりとて一般的に高負荷の要求される処理には十分に耐える程度の構成にしてみた。実際、それを使ってみたら、大満足だった。コロナ禍でさして外に出て仕事をすることもないので、自宅のパソコン環境の最適化という意味ではWindowsデスクトップという選択はかなり良かった。

というところで、Windowsデスクトップと、Intel MacBook Proがあるならそれで十分だろうと思う話だが、いやたしかに十分なのだが、私はふとM1チップ搭載のMacに興味をもってしまった。 理由は、2021年10月の、M1 PRO/MAX チップ搭載のMacBook Proの発売である。 言うまでもなく、M1 PRO/Maxチップは、前年に登場したM1チップの強化版である。M1の時点では、コンピュータに実装できるメモリも最大で16GBだったものが、今回のM1 Maxチップに至っては64GBまで実装できる。また、Thunderboltポートも増えたほか、HDMIポートや充電用のMagSafeポートも搭載され、まさにProの名にふさわしいコンピュータとして登場した。サイズも、やや小型の14インチモデルと、大型の16インチモデルの2系統が用意され、プロユーザの好みに合わせての提供が可能になっている。

しかしながら、当然価格も上昇している。ここが個人的には気になったところだった。いやもちろん、製品価格が高いのは構わないのである。日本の物価水準が単に上がらないだけで、グローバルの物価は上がっているとか、当然そういう経済的状況も認識している。それは別にいいのだが、単に私が、2021年発売のMacBook Proを買うのはためらっただけなのだ。だって、14インチモデルの最小構成(16GBメモリ、512GBストレージ、M1 PROチップ)でも、239,800円である。それをいま買うのは残念ながら厳しい。

そう思ったときに、ふと気づいたのが、M1チップのモデルはどうなんだという話だ。そこで中古オンライン販売などの価格を見てみると、なんとMacBook Airの最小構成なら8万円台から販売されている! M1 PRO 搭載MacBook Proの1/3程度の価格である。単にM1というか、Apple Silicone を使いたいなら、 これでいいじゃないかと気づいたのだ。

そこで、色々考えた結果、M1 MacBook Airの最小構成(8GBメモリ、256GBストレージ)を購入した。上述のように、メイン仕事はWindowsを使っているし、サブとしてMacBook Pro 16インチ(Intel)があるので、今回買うMacBook Air は三番手なのだ。であるなら別に構成を強化する必要はないなと思った。

カラーリングも、Airにしかないゴールドをはじめて選択した。これはもう、おしゃれなのだ。服に一切金をかけず、ユニクロどころか遠い昔に親にもらった服を平然と着ている僕にとっては、コンピュータの外見だけが唯一の外見上のこだわりといっても過言ではない。

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ということで中古で購入したM1 MacBook Airだが、使ってみた感想は控えめに言って最高だ。メモリ8GBとはとても思えない快適さである。 昨年6月までのぼくのメイン機はメモリ8GBのIntel MacBook Pro(13インチ)だったが、正直言ってマルチタスク性能にはいつもがっかりしていた。何をやってもファンが全力で回り、もう本体はいつでもアツアツである。結果として電池もちも極めて悪く、充電ケーブルとアダプタなしではとても外には出かけられないレベルだった。 だが、このM1 Airはとても同じメモリ8GBとは思えない。もちろんファンがないので、仮に熱を持ったところでファンは回らないのだが、そもそも熱を持つ気配すらないのである。Chromeのタブを多めに開いたり、Zoomをつないで画面録画をしたり、といった通常のノートパソコンだったら既にそれだけでCPUとメモリに負荷がたくさんかかってくる作業をしても、平然としている。 いやはや、M1チップの性能の高さと、それを活かし切る実装をしているAppleの開発陣に心底恐れ入った。なんだこのマシンは。 もちろん、4K動画の編集などをすることになれば、さすがにこのマシンでは力不足かもしれない。でもそれのサクサク感を望む人は、2021年発売の最強MacBook Proをスペック強化したモデルを買えばいいのだ。軽作業、事務中心に使う人にとってはあきらかにそこまでの性能はいらない。

ということでまとめると、私が1年経って買ったM1 Airに感じること。それは、「最もバランスの良い普段遣いノートパソコン」ということである。 価格感のバランス、電池もちのバランスの良さはもちろん、重さという意味でもここは評価が高い。 私が持っているIntel MacBook Pro 16インチの重さは2.0kg。正直、重い。リュックに入れていても結構ずっしり来る。男性の私でこれなのだから、女性であれば相当キツイだろう。 しかし、Airであれば重さは1.3kg。もちろん、近年発売されている軽量Windowsモバイルノート(0.8-0.9kg程度)に比べれば重いので、最軽量モデルとは言えないが、上述したとおりに、性能や価格、電池もちとの総合バランスで考えれば、最上級に評価できると考えている。軽量Windowsモバイルノートは、実は価格はけっこう高いのだ。軽量小型で高性能化すると、価格はトレードオフで上昇する。15万円以上するのも普通だ。それに比べれば、新品で11万円、中古なら9万円ほどで買えてしまうM1 Airは極めてコストパフォーマンスが高いといえるだろう。

ということで、私はIntel MacBook Proは持ち運ぶことをやめて、M1 Airをリュックに入れることにした。おかげで、物理的にも軽いし、気持ちも軽くなった。それだけでも、もうM1 Airを買って元をとった気持ちでいる。

最後に。 レビット博士が提唱した「ドリルと穴」の話を出して終わりたい。 これは知っている人も多いと思うが「顧客がほしいのはドリルではなく穴である。だから、売り手は、顧客に対してドリルの説明を一生懸命するんじゃなくて、顧客が本当に解決したい課題に焦点を当てよ」というマーケティング訓話である。 これにコンピュータの事例を当てはめて考えるなら、「人々がコンピュータを欲するとき、別にそのコンピュータのスペックの高さが目的ではなく、コンピュータを使って解決したい課題が本質なのだから、課題のほうに注力して製品を開発、販売せよ」という学びが得られるということになるだろうか。

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だが、私はこの説がすべてのケースで妥当だとは思わない。 特にアタラシモノ界隈では、ほとんどこの考え方は当てはまらないだろうと思う。

たとえば、人がコンピュータが求める時は、明確に解決したい課題があるから、という時ばかりじゃないのだ。 発売されたコンピュータが、得も言われぬ魅力を発していると、なぜかそれが欲しくなってしまう。課題などというのは、むしろそのコンピュータを買う理由を自分に作るために探し出す。そんなことが実際、あるのだ。 スマホタブレット、あるいはアクションカメラやドローンなどのガジェットでもそれは同じはないだろうか? 本当に解決したい課題なんてものはない。単に新たなイケてるガジェットに興味が湧いて湧いて仕方ない。だから、買い求める課題なり理由なりを無理くりひねり出す。 ガジェット好きとは、そういう人なんだと思っている。

私はさしてガジェット好きとは言えないが、多少その気質を持っていることは否めないし、だからこそ新しいガジェットやテクノロジーの情報を追うことが楽しいのだろう。 そして、そういう性質であるがゆえに、その知識で人助けができることもままある。それは私にとっても、うれしいことだ。


2020 Apple MacBook Air ノートパソコン: Apple M1 Chip、13インチ、8GB RAM、256GB SSD、バックライトKeyboard、FaceTime HDカメラ、Touch ID、iPhoneとiPadに対応; ゴールド