酒を飲まないようにするには、準備99%、現場1%

習慣を変えるのはとっても難しい。

何日か前のブログで酒を飲む必要はないんじゃないの、ってことを書いた。書いたということは、ある程度それの実行に対しても意識が向いたということだと思う。でも、結局それ以来何度か人と会って飲食する機会があったときに、酒を飲むことを止めることはできなかった。

「酒を飲むことを止めることはできなかった」って書くと、なにやら深刻に見えるけれど(笑)、別にアルコール中毒ってわけでもないし、そこまで酒癖が悪い(飲んで人に不快なことをする)タイプではない、はずなので、飲むことにそこまで問題はない。
習慣を変えたいというもやっとした意識づけは、実際の行動にはほとんど効果がない、ということが自分を実験台にして、よく示された結果ではある。

もっとも大前研一の「行動を変えるのにもっとも無意味なことは新たな決意」という名言のように、これが「強い決意」だったとしても、多分なにも行動は変わらなかったはずだ。今回、別に強い決意は何もしてないけど。

こう書いてみて、ふと思うのは、強い決意というのは、その発想じたい、かなり悪いものかもしれない、ということである。
なぜかというと、たとえば強い決意でもって「絶対に会食で酒は飲みません!」と誓ったとして、実際に酒を飲むことはとても簡単だからである。
そして実際に酒を飲む、すなわち決意に反する行動をとったときに、自分を責めてしまいやすい。これが悪いと思う理由だ。

f:id:startselect:20161218064825j:plain

仮に、「酒は飲まない」と強い決意をもったとしよう。しかしながら、人との会食の約束が、その決意よりも前の段階で決まっていて、その場所が夜の居酒屋だとするなら、メニューには100%の確率で酒が入っているはずだ。 そして、自分に酒を飲むという習慣が定着していて、そして会食の相手も同じ習慣を持っているのであれば。
「何飲みますか?」「じゃあビール」「俺も」「私も」の流れが始まったときに「ぼくは酒を飲まないつもりなんで、ウーロン茶」と言うのは、とても難しい。

ここでウーロン茶を頼む難しさの理由は2つある。
1つは自分の習慣じたいが、無意識に染み付いているからである。

行動経済学者のダニエル・カーネマンは、人間の思考と行動には「速い」ものと「遅い」ものの2つがあると提唱した。 (*1)
速いほうはシステム1と呼ばれ、思考と行動のオートパイロットである。遅いほうは、システム2と呼ばれ、熟慮のうえの決定を指す。

居酒屋でビールを頼むのは、明らかにシステム1のなせる業だ。そして、システム1は基本的に、システム2よりも速く、強力に作動する。だから、行動を変えようと思うたびに、システム2を使おうとする、つまり「意識をもって行動を変える」のは、人間のしくみからすると、かなり不合理な選択ということになる。

もう1つの理由は、周囲のひとの行動の影響である。

会食は1人ではできない。必ず、友人や家族、接待相手などなどがいるはずだ。相手との関係性や文脈にもよるが、いずれにせよ飲み物、食べ物のメニュー選択においては、必ず影響を受け合うであろう。
人は極めて社会関係に影響される生き物だ。そうやって、自然界の厳しい環境を生き抜いてきた。「周囲に流されない」と決意することは簡単だが、私たちの思考と行動は「周囲に流されてうまくいく」ほうを選ぶのが得意なのだ。これもまた、システム1の奥底にがっちり埋め込まれているので、行動の現場で抵抗することはむずかしい。
みんなが酒を頼むのに、自分だけ断れないのは、当たり前だ。

という、2つのシステム1の強い行動原理があるのに、それを「決意」というもので変えるのは、まず持って不可能と思うべきなのだ。

そこを認識しないで、「酒を飲まない」と決意したのに、それが守れなくて自分を「なんて意志が弱いのだ」と責めてしまうと、これは負のループの入り口だ。
これが繰り返されると、まじめな人ほど、学習性無力感を覚えるようになってしまう恐れもある。非常に危ない。 (*2)

意志・決意は、強い、弱い、という形容詞のバロメーターで評価しないほうがいいのだ。実態としては、強いことが良いわけではないはずだし、そもそも今回のポイントとしては、意志に強さという基準を持ち込まないほうが幸せなんじゃないかということなので。

f:id:startselect:20161218064911j:plain

とはいえ、酒を飲まない、という達成すべき状態の目標を立てることは、とりわけアルコールが悪い影響をもたらしてしまう人には重要である。そこはやっぱり、達成すべきだ。

では、どうすれば居酒屋で、酒を飲まないでいられるのだろうか?

結論としては、それは通常かなり困難なので、居酒屋に行ったら諦めることが良いと思う。既に決まっている予定については、飲むことを自分に禁じないほうがよい。

ただし、そこから先、居酒屋になるべく行かないように行動すればいい。
たとえば、メールやFacebookメッセンジャーで友人から誘いが来たならば、別に即座に返答する必要はないはずだ。 そこがまさに、システム2の出番である。
即答でシステム1が「行く行く〜!」と返すのを待ったをかけることは、居酒屋の現場で酒を頼まないことに比べれば、よほど実現性は高い。

そこでシステム2を使うためには、準備が必要だ。「意志の力で」友達の誘いを断るのは、難しいのでやめたほうがいい。

たとえば、代案を出すことは、かなり有効なはずだ。「夜ではなくて、昼のランチにしませんか」とか。
これなら、友達と会うことと、酒を飲まないことを両立できる。お金も安上がりになるはずで、お得でしかない(笑)。
こうやってお得になった額を手帳なり家計簿アプリなりで記録していくと、もしかしたら、続きやすくなるなどのプラスの効果もあるかもしれない。
とにもかくにも、準備99%。うっかりランチの店で、メニューに酒を見つけても頼まないようにする、1%くらいしか現場でやることはない。

どうしても夜の酒のシーンになるものは、おとなしく諦めること。それ以外を減らせばいい。

酒を飲んでしまうという習慣を変えるには、習慣を「量と頻度」と定義しなおして、それをブレークダウンして減らせるところから減らすのが、一番効果的だろうと思う。

なんで、こんなこと書いているかというと、この連続ブログを書く企画の自分の継続を危うくするのは、ほぼほぼ毎回酒なので(笑)。 今日もこうやって時間ギリギリに書いている。

そもそも12月というシーズンにこれを企画したことが無茶だよね、と改めて思うけど、それもまたシステム1の直感は、未知の習慣づくりをうまく予測できない、という証左だと思ったりもする。


*1 blog.livedoor.jp

*2 diamond.jp