ギブギブン

1ヶ月毎日ブログ書く企画ではじめたブログです。

ファッション雑誌について人生で初めて考えた

前回から続く?というわけでもないけど。
ドラマ校閲ガールの中心的舞台のひとつ、ファッション雑誌編集部をテーマにして、そもそもファッション雑誌ってなんだろうと考えてみたい。

まず、なぜこのデジタルメディアが旧来のメディアに取って代わる時代に、アナログの紙に依然影響力があるのか?という疑問があるのだけど、このドラマを見ている範囲で思うこととしてはその答えになりそうなものが3つ思いついた。
1つめは「リソース確保のしくみ」
2つめは「人材の採用と育成」
3つめは「紙であることの強み」

1つめは、たとえば新作のアイテムのようなファッショントレンドを作り出す/体現するのに必要なリソースにアクセスして確保することがゼロベースには大変で、それに比べると既存の体系を持っているファッション誌の編集部をデジタルメディアがリプレイスすることは見た目以上のハードルがあるのではないかということ。

2つめは、編集者やスタイリスト、カメラマン、あるいはモデルなどの専門性ある人材を確保して、育てることが継続的なトレンド発信には重要になってきて、それもまたデジタルメディアを作るだけでは決してすぐどうにかなるものではないからだと考える。たとえお金があっても、お金を適切な人に使って、その人がうまく動いて連携してトレンド発信のアウトプットまで持っていくのは大変そうだ。

3つめは、これは媒体特性として紙であることが強いのではないかということ。実際スマホタブレットはどんな大画面といってもせいぜい10インチ程度だし、何よりそれをユーザ側が所有していることが必要。それに対して紙の大型サイズの雑誌は、見開きでインチ換算でいったら20インチには達するだろうし、フルカラーにもできて、なにより雑誌そのものが表示媒体なのでユーザ側のデバイス制約がない。そして、書店やコンビニなどで、その大きさやロゴ、表紙モデルの眼力などなどユーザを誘引することができ、さらにコミュニティのなかでの回し読みなんて効果も期待できる。
たとえば小説や漫画であれば、省スペースで自分ひとりが読めればいいのだから、自分所持のデバイスで5インチくらいあれば充分かもしれない。対してファッション雑誌は、月に1回くらいの発売であり、熟読を要するというよりも、目に飛び込む第一印象やイメージ、感性を引きつける、そしてトレンドの移り変わりを読者に印象づけることがメディアとしての主目的である。あるいは今作の主人公河野悦子のように、保存して見返して、辞書的/アルバム的に使う人もいるだろう。このようにユースケースを考えると、このアナログの大きくてまるでアルバムか図鑑のようになった紙雑誌の合目的的なパワーはそうそうリプレイスされるものではなさそうだ。

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と、ここまで書いてこの推測が当たっているかどうか、答え合わせのつもりでざっと調べてみた。
2017年上半期のファッション雑誌の販売ランキングがちょうど2日前に発表されていた。 (*1)

女性ファッション雑誌『リンネル』(177,052部)は月刊女性ファッション雑誌の販売部数において、2位の『sweet』(175,844部)を僅差で抜き、初の1位となりました。
(中略)
『リンネル』は、2010年10月に創刊し、「心地よい暮らしと装い」をコンセプトに、“暮らし系女子”という新たな市場を創出・開拓。10代から70代と幅広い世代の読者を獲得しています。

おもしろい!2010年創刊というと、まだ8年しか経っていない。まさに情報のデジタル化がどんどん進んでいく只中に創刊されて、ついに1位をとるまでシェアを伸ばしたというのは。

ざっくり考えられる要素は2つ。1つめは、リンネルが圧倒的に支持を伸ばした。2つめは、ほかの雑誌が伸び悩みシェアをおとした。ちょっとここを深掘る時間はないので、要素を上げておくだけに留める。

リンネルの公式サイトを見て、特徴に感じることが2つあったので記載しておきたい。(*2)

1: 付録の存在
2: 公式通販サイト「クラリネ」の存在 (*3)

1つめ。付録としては、ムーミンのネイルセットが6月号にはついているそうだ。これは確かに、物理本だからこそできる魅力である。書籍のロジスティクスに載せることで、付録という価値あるアイテムをコストをかけずに届ける。これによって、購買に相当つながっていそう。
2つめ。公式通販サイトは、ざっと見たところでは必ずしも雑誌本体と強い連動があるわけではない(雑誌で紹介するアイテムを買える、というようなものではなさそう)。では何を狙っているのかというと、私はこのサイトを見た時に、すごく「ほぼ日」っぽいなあと思ったのだ。(*4) コラムがあって、企画商品の販売ページがある。コンテンツを読む体験から、購買につながる上質な体験をつくるこことに努めているように感じた。
このサイトがあることで、むしろ雑誌側とは切り分けて、実験などが行いやすいのでは?という仮説を立てた。サイトでうまくいった企画を雑誌に持ち込むとかもできそう。雑誌の場合はシーズナリティから逃れることはできず、情報もストックできないが、逆に旬を伝えるパワーは大きい。いっぽうサイトは情報がストックされ、蓄積コンテンツになる。
この雑誌とサイトの巧みな2つの接点を持つのが、2010年創刊という新規参入者だからこそできる強さなのかなーと想像した。

ということで考えると、これまでアナログ雑誌としてもてはやされたファッション誌も、ただ同じことを続けていては、新しい実験や挑戦ができず、市場のトレンド変化や経済的背景の変化を追いきれず、凋落する可能性は高いのかもしれない。

ファッション雑誌とは、ただ雑誌にとどまらずに「ライフスタイルを提案するメディア」というビジネス・テーマとして、考えるべきなのかなーと思った。

以上、ゆるゆると考えてみた。


*1 www.sankei.com

*2 tkj.jp

*3 kuraline.jp

*4 www.1101.com